愛知学院大学 禅研究所

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参禅会体験記  平成10年

本研究所では、毎月第2火曜日午後4時30分から火曜参禅会を開催しています。
本学の教職員や学生ばかりでなく、学外の方や外国の方も参禅に来られます。経験の有無にかかわらず、関心のある方は、お気軽に禅研究所までお尋ねください。
以下に、参禅会員の体験記を紹介します。

小田 善一

参禅会に加えていただいて

 外国での勤務を経験してから、もう20年余りも昔のことになりますが、空港での入国手続の都度、又或る時は異国の病院のベッドに横たえられ、必ず聞かれたことは「貴方の宗教は?」という問いかけでありました。その頃、今でもそうでありますが、私には宗教に対する、しっかりとした心構えもありませんでしたので、その場その場で取り繕って、「仏教」と答えて遣り過して参りました。
 歳月が過ぎ、定職からも退き、なんとか自分をみつめる時間的余裕が持てるようになった頃より、それまで何となく心の片隅に押し遣っていた、「私にとって宗教とは」と自問する声が、祈々心に聞こえるようになって参りました。
 そこで、街に出掛けては、間々書を漁り、人伝てに耳にすれば、講話も聞きに行き、時には坐る機会も度重ねて参りました。
 偶々、菩提寺(山口県柳井市)の方丈さまより、本学院の来歴を聞き、又春秋の公開講座に聴講生としての経緯もありましたので、御許しを得て、此の参禅会に加えて頂くことに致しました。修行には、時や所を択ばぬものと心得ますが、矢張り此の閑静な学院の禅堂で体験する坐禅では、真に身心の洗われる思いが実感され、そのうえ、おおよそ5キロの道程では車を捨て、出来るだけ静寂な野辺の道を選んで歩くことを楽しみ、健康にもプラスになることを喜び、感謝しております。
 参禅会に加えて頂き、一年余になりますが、「私にとって宗教とは」の解は未だ確かなものにはなっておりません
 宗教とは、常識的には「神仏への信仰」と思いますが、「私にとって宗教とは」目下のところ、『安心立命を行ずる教え』であることを考えております。
 今、此の世に生を頂き、此の命を更に生きるに価いするよう、何ごとにも惑わされることなく、安らぎの心を得られるありよう、つとめ(努、動、勉)に気づかされ、諸々の苦悩より解放され、安らかな心に立ち向かわせるよう導く教え、と感得するようになっております。それには只管打坐の外に道なし、とようやく覚悟出来るようになり、参禅会に通う今日此の頃です。
 斯のような不佞の論に矯激を頂ければ、望外の喜びであります。

杉浦 国夫

調息致心

 私は、平成8年から開放講座の聴講生として通学するようになり、そのご縁で参禅会員となり一年半が経過しようとしています。参禅会は所長老師の検単に始まります。検単が終って、止静鐘(しじょうしょう)が入り、対坐から面壁し一の坐禅へと進みます。私は結跏趺坐(けっかふざ)を組みました。未熟ですから、止静に入って直ぐ「深く禅定(ぜんしょう)に入り給う」という具合には勿論参りません。生身の人間ですから、遠く運動部員の掛け声も聞こえますし、秋の虫の音も耳に入ってきます。脈絡のない雑学も頭に浮かびます。が、捉われることなく、「調身し、調息のところに、調心が得られる」との教えに基づき、調息の一行三昧に徹しました。
 調息致心について、私の心掛けている聖訓は、次の通りです。
 「息は鼻より通ずべし」「鼻息徴かに通し」「鼻息は通ずるに任せ、喘がず声せず、長からず短からず、緩ならず急ならず」「息入り来たつて丹田に至る。然りといえども、従り来るところなし。所以に長からず、知がらず。息、丹田より出で去る。然りといえども、去るところを得ることなし。所以に短からず、長からず。」
 纏めてみますと、端身正坐、身相を調えて、臍下丹田への腹式呼吸、調息に心を致し、出息、入息、長からず、短からず、この調息の一行三昧を懇ろに勤めるのみです。
 前述のように、未熟の坐禅ですから、一の間は、「三業に仏印を標し、三昧に端坐する」の状態であったかどうか、自ら顧みて誠に心許ない次第です。経行終って、二目に入り、どうにか調身、調息が行き届ぎ、調身心の「只管打坐」と言える坐禅の現成だったように思えました。
 天地一杯の入息出息、調息致心、仏性三昧、一行三昧の正業。「心意識にあらず、念想観にあらず、作仏を図することなかれ」、この坐禅の正当恁麼時(しょうとういんもじ)を「尽十方界身の即現」となし「法界坐断の当処即是」とする、本証を伝受しての妙修は、誠に有り難いものと存じます。最後に一回限りの絶対に繰り返すことができない尊い人生だから、道元禅師の教えに導かれ、生活を簡素にして坐禅に親しみ、感謝報恩の日暮しでありたいと念じております。これからも宜しくご指導下さるようお願い申し上げます。

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