愛知学院大学 禅研究所 火曜参禅会

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研修旅行レポート

石川平成23年度 加能両州に同門源流を訪ねて

平成23年度の研修旅行は、8月29日から31日の日程で石川県を訪れました。参加者は28名でした。

 初日は北陸自動車道をバスで金沢市へ向かいました。途中、白山麓で昼食の後、東香山大乗寺と金龍山天徳院を拝登。その後、能登半島の輪島温泉に宿泊しました。

 二日目は輪島の朝市を散策した後、大本山總持寺祖院を拝登。千里浜なぎさドライブウエイを経由して、羽咋(はくい)市の洞谷(とうこく)山永光寺(ようこうじ)を拝登。また、かほく市の西田幾多郎記念哲学館を見学した後、辰口温泉に投宿しました。

 三日目は金沢市内に戻り、はじめに日蓮宗正久山妙立寺、通称忍者寺を拝観。また、現代美術の収蔵展示で知られる金沢21世紀美術館の見学と、前田利家公を祀る尾山神社の参拝の後、近江町市場で各自、昼食と買い物を楽しみました。また、午後からはオプショナルコースとして、江戸時代の雰囲気を残すひがし茶屋街の懐華楼と、加賀藩の酒蔵として著名なやちや酒造を見学。夕刻、バスで名古屋に戻りました。

絆を実感した三日間丹羽 治一

研修旅行 石川 写真1

 この旅を通じて強く感じたこと、それは歴史を繋いできた先人たちの強い絆です。

 長い年月を生き抜いてきた名刹は、いずれも長い歴史の中で一度は消滅の危機を迎えています。

 初日に訪れた、加賀における初の曹洞宗寺院である大乗寺は、1261年に創建されたものの、1580年に柴田勝家の兵火により失われ、1697年に再建されています。

 二日目に訪れた、曹洞宗中興の祖といわれる瑩山禅師開創の總持寺祖院は、1321年にはじまり、朝廷及び諸武将から長く崇敬されたものの、明治三一年の大火でほぼ全焼してしまいます。その後本山は横浜へと移ったものの、祖院として深い歴史をいまに伝えています。

 いずれも750年、690年という長い年月を経て、消滅の危機を迎えながらも、教えを絶やしてはならないという意志に支えられて、こうして眼前に風格ある佇(たたず)まいを広げていることに、大いに感銘を受けました。

 これまでもこの研修旅行で様々な名刹、古刹を訪れる機会を得ていましたが、この種の感慨を抱いたのは今回が初めてだと思います。

 なぜそのような気持ちになったのかというと、この研修旅行の約半年前に起こった東日本大震災が強烈な印象を私の心に宿していたからに他なりません。

 一瞬にして町ごと飲み込んだ津波の恐ろしさは、いまでも身震いするほどです。

 いま被災地は復興への道のりを歩み始めたばかりですが、被災地の皆さんは勇気をもって未来に向けて踏み出そうとしています。

 今回の研修旅行で訪れた数々の歴史的建造物がそうであるように、人々の強い絆により、必ずや被災地も立ち直るものと信じています。

 長い歴史を生き抜いてきたものへの慈しみを感じた一方で、北陸ならではの食材を充分に味わえた食事や、最終日に訪れた近江町市場の賑わいも楽しい思い出であり、参加者相互の絆を確かめあう充実の三日間でした。

学院生活をしめくくる旅伊藤 照夫

研修旅行 石川 写真2

 今までに参加させて頂いた研修旅行を振返りながら「旅行記」を書かせて頂きます。

 記憶をたどると、昭和の時代、文学部に小口教授が在職され、その関係で、日本救世教本部、大石寺、創価学会の講堂(三日間の寄附で集まった数億円で建立と言われる)の研修まで遡る事になります。

 その後しばらく遠のいていましたが、十数年前から参加できるようになりました。

 国内では、山形(平成10年)、大分(12年)青森(13年)、長崎(14年)、宮城(15年)、鹿児島(16年)、岩手(18年)、富山(20年)、千葉(22年)、国外では、ハワイ(11年)、イタリア(16年)、カンボジア・ベトナム(19年)、台湾(21年)とほぼ毎年参加することができ、それぞれの地で、貴重な体験をさせて頂き、感謝の念に堪えませんでした。

 さて、今年度の研修は私にとって、最もふさわしい場所が提供されたと思います。曹洞宗立の学校に奉職して47年になり、その締めくくりが曹洞宗本山を含め重要な関係寺院であったのは何かの因縁を感ぜずにはいられませんでした。

 その研修は、曹洞宗東香山大乗寺、金竜山天徳院の拝登から始まりました。 特に大本山總持寺祖院は本山が横浜に移転して百周年を迎える事、先の能登半島地震にもめげず復興が進んでいる事(僧堂は完成、法堂(はっとう)は進行中)、また挨拶を頂いた今村源宗監院老師はイタリア研修時に現地のヨーロッパ布教総監部で説明をして頂いた方であった事等、特に印象深いものでした。

 次の永光寺(ようこうじ)では、近く外国人僧侶の研修会が行なわれると言う事で、山内が整備され、五老峯に行く廻廊もきれいになっており、楽に行く事ができ有難く思いました。西田幾多郎記念哲学館は、建築家安藤忠雄氏の独創的なコンクリート打ちっぱなしの建物で、思索体験ができました。

 最終日には、忍者寺(妙立寺)、金沢21世紀美術館、尾山神社、近江町市場、ひがし茶屋街の懐華楼、老齢の主人の自慢話のあったやちや酒造等が研修できました。

 全日程、内容とも、学院生活のしめくくりにふさわしい研修でした。感謝、感謝の一念を持って筆を擱きます。ありがとうございました。

研修旅行に携わり安藤 浩司

研修旅行 石川 写真3

 旅行会社の担当者として、昨年度、初めてご一緒しました千葉研修では、二日目途中、バケツをひっくり返したような大雨に襲われ、「もしかしたら私が雨男?」と疑心暗鬼でした。今回の石川研修旅行は、二月に事務局より企画作成依頼をいただき、そこから今年の研修が始まりました。

 前回同様、私たち旅行会社の人間もなかなか行くことがないお寺に行くことができるという、何とも言えないワクワク感・好奇心(不謹慎ですが…)が湧いてきて、コース作成にも熱が入ります。拝登のお寺は事務局の先生方より教えていただき、昼食場所・宿泊ホテル・その他観光地を加えて提出。縁ありまして、また皆様とご一緒できることとなりました。

 今回は、大学から観光バスで出発ということで、早朝よりご集合いただき、名古屋ICより高速道路で一路石川へ!
 道中は、本木雅弘主演の映画『ファンシイダンス』(今回研修での最初の訪問地「大乗寺」でロケ)を鑑賞しながらの移動となりました。河合先生に解説も添えていただきながら、昼食場所の和田屋に到着。

 ここは、白山麓にあり、季節の恵みを堪能でき、窓からは日本庭園が美しい景色が見え、目の前の囲炉裏で焼いた川魚を食すことができましたが、今回は短い時間でしたので、是非プライベートでごゆっくりいらして下さい。

 その後、大乗寺、天徳院と拝登をし、一日目の宿泊地である能登半島の輪島温泉に到着。夕食での海の幸もさることながら、やはり印象的だったのは「御陣乗太鼓」。独特のリズム感や異様とも思える雰囲気で、叩かれる太鼓の音が心の奥底まで響きわたり、あっという間に時間が過ぎてしまいました。

 二日目は輪島名物朝市の散策からスタート。その後、大本山總持寺祖院及び永光寺での拝登後、西田幾多郎記念哲学館を見学。こちらの建物は建築家の安藤忠雄先生が設計され、テーマは「考えること」だそうです。たしかに複雑な造りの建物で考えさせられました。

 最終日は妙立寺(通称、忍者寺)を訪れました。実は二日目の宿泊ホテルから妙立寺までの道は、普段大変混み合う道路と聞いていましたが、いざ蓋を開けてみると予定所要時間の半分以下で到着。妙立寺は完全予約制で拝観時間が決まっていましたので、時間までお待ちいただくことに、冷や汗の出る思いでした。ここでは二班に分かれ、巧みに配置された隠し扉・隠し階段などの説明を聞きながら案内を受け、非常に面白い場所でした。その後、金沢の台所、近江町市場にての自由行動で、お食事と買物を済ませていただき、またご希望の方には、ひがし茶屋街でお茶屋見学と抹茶和菓子をご賞味いただきました。その後、加賀藩御用達の酒蔵にて見学及び試飲をして、お酒をお土産に買われる方も多数いらっしゃいました。

 皆様にもご協力いただき、また知識豊富なバスガイド、安全運転のドライバーにも助けられて、無事帰ってくることができました。ありがとうございました。

旅行のおもいでAlbum

石川

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研修報告Training Report

平成23年度研修旅行
石川

 本年度の研修旅行は石川県を訪れた。江戸時代には前田藩百万石の繁栄を支える一方で、北前船の寄港地としても栄えた加賀国と能登国は、十三世紀以来、曹洞宗教団が教線を全国へ拡張するための基盤を準備した地域でもある。

 今回拝登した曹洞宗寺院は大本山總持寺祖院、金沢市の東香山大乗寺、羽咋市の洞谷山永光寺(ようこうじ)、金沢市の金龍山天徳院である。改めて記すまでもない名刹ばかりだが、簡略な報告を述べておきたい。

 大本山總持寺祖院は元亨元年(1321)、諸嶽山總持寺として瑩山紹瑾禅師によって開かれた。翌年、後醍醐天皇から「日本曹洞出世第一道場」の綸旨を受けると、總持寺は日本曹洞宗の中心道場として、全国に一万五千カ寺の門葉寺院を擁し、江戸時代だけでも全国から五万人近い「一夜住職」(瑞世師)を迎えるまでに発展した。しかし、明治31年(1898)4月13日の大火で七堂伽藍の大半を焼失。明治44年(1911)に横浜鶴見に大本山が移転した後は、瑩山禅師の霊廟を護る能登祖院として再興された。

 私達は寛保3年(1743)建立の経蔵を見学した後、仏殿で拝登諷経を行い、監院の今村源宗師の歓待を受けた。ちなみに、同師は平成十六年のイタリア研修旅行の時、ヨーロッパ開教総監として私達を迎えて下さった方である。奇しき御法縁に感謝した。

 また、總持寺祖院は平成19年3月25日の能登半島地震で甚大な被害を受けたため、今も復興工事の途上である。そのため、法堂を参詣することはできなかったが、通常は法堂に祀られている瑩山禅師や、かつて山内に存在した五院の開基である祖師達の尊像が仏殿に仮奉安されており、親しく拝することができたのは千載一遇の好機であった。

 東香山大乗寺は正応2年(1289)に永平寺三世徹通義介禅師が開き、瑩山禅師が二世を継いだ寺である。道元禅師、懐奘禅師、徹通禅師の御霊骨を奉安し、古くは椙樹林(しょうじゅりん)、後に金獅峯(きんしほう)とも呼ばれた。元禄10年(1697)に加賀藩国家老本多政均(まさちか)によって現在地に移され、七堂伽藍を整えられたという。また、江戸時代には月舟宗胡禅師や卍山道白禅師が歴住したことでも知られる。私達は住職の東隆眞師から説明を伺った後、諸堂を拝観した。

 洞谷山永光寺(ようこうじ)は正和元年(1312)に瑩山禅師が開創し、正中2年(1325)に同禅師が遷化された寺である。背後の山中には、如浄禅師、道元禅師、懐奘禅師、義介禅師、瑩山禅師の五祖の遺品を埋葬した五老峯を仰いでいる。当寺は、元亨元年(1321)に後醍醐天皇によって宗門初の出世道場に定められたが、江戸時代に總持寺の末寺に組み入れられた。開創七百年を記念して、通常は山門上に祀られている十六羅漢が法堂に安置されていたため、間近に参拝することができた。監寺の屋敷智乗師よりご挨拶を頂き、山内を拝観した。

 金龍山天徳院は、二代将軍徳川秀忠公の二女で、加賀藩三代藩主前田利常公の正室珠姫の菩提を弔うため、元和9年(1623)に創建された。開山は巨山泉滴和尚。寺号は珠姫の法名に由来する。住職の荒井源空師より説明を受けるとともに、名古屋の木偶師、八代目玉屋庄兵衛師が手掛けたからくり人形による珠姫物語の上映を鑑賞した。

 この他、平成23年は名著『善の研究』出版百年であった。西田幾多郎記念哲学館を訪れ、その思索の一端に触れた。また、江戸時代から続く金沢の茶屋街や酒蔵も見学した。洞門源流の古刹に祖師の足跡を訪ねるとともに、かつての加賀文化の香りにも触れて、実り多い研修であった。(文)

研修旅行 石川 写真4

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