愛知学院大学 禅研究所 火曜参禅会

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研修旅行レポート

シンガポール平成24年度 宗教と民族の十字路

研修旅行 シンガポール 写真1

平成24年度の研修旅行は、9月3日から6日の日程でシンガポールを訪れました。参加者は30名でした。

初日は中部国際空港からシンガポール・チャンギ空港へ。マンダリン・オーチャード・ホテルにチェックインをした後、海鮮料理店で名物のチリ・クラブを味わいました。

2日目はマーライオン公園や富の噴水等の観光名所をめぐるとともに、各宗教施設を訪れました。まず、同国最大の仏教寺院である光明山普覚禅寺と、七堂伽藍を誇る蓮山雙林寺を拝登した後、仏陀の歯を祀る仏牙寺龍華院、ビルマ仏教のマハ・ササナ・ラムシ寺院、最古の道教寺院の天福宮(ティアン・ホッケン寺院)と、参拝者でにぎわう観音堂、ヒンドゥー教のスリ・ヴィーラマカリアマン寺院、イスラームのサルタン・モスクを見学しました。また、夕食には現代的なインド料理を堪能しました。

3日目は自由行動。オプショナル・ツアーでマレーシアのジョホールバルへ「外国旅行」に出かけたり、ホテルでハイ・ティーを味わったり、買い物を楽しんだりと、思いおもいに過ごしました。そして、夕方からはナイト・サファリで夜の動物達とご対面。深夜便に搭乗し、4日目の朝に帰国しました。

研修旅行 シンガポール 写真2

華やかさの中で信仰の原点に触れる旅田尾 雅夫

研修旅行 シンガポール 写真2

 大学生になった夏と秋に、滋賀県にある長命寺や湖東三山を歩いたことがある。三山のどこだったか忘れてしまったが、紅葉が華やかであったことを鮮明に覚えている。それ以後、一人のこともあれば仲間とのこともあったが、古寺をめぐり歩くのは私にとってリフレッシュのよい機会になった。冬に人気のないお堂の中に一人で座り込んで、心が洗われるというか、快感のようなものを感じることもあった。和辻哲郎の『古寺巡礼』の世界に憧れるなどは、時代に遅れた文学青年のようで照れくさいのだが、本学に来て以来、都合さえ何とかなれば研修旅行に参加させていただいているのも、その延長でのことである。これまでに富山と能登への旅行に参加させていただいたが、一人だけでもう一度行けたらと思うお寺もあった。

 だが、今回のシンガポールは、その気分を吹っ飛ばしてくれた。その過剰な華やかさである。これが寺院かというのが率直な感想である。富山でも能登でも感じなかったものである。(ちなみに、京都には長い間住んでいながら、いわゆる観光寺院にはほとんど行っていない。)しかし、その本堂の床にいつまでも跪いて祈っている老人の姿(若い人も並んで祈っていたが)を見ると、シンガポールという都市の華やかさに寄り添うような信仰の篤さがそこにはある。

 あのころの若かった私は、ただ美術史の一部としての理解しかなかったのだと思えば、あのギンギラギンの原色に彩られた寺院に対して、私が感じてしまった違和感は、当分消えることはないだろう。とはいいながら、自分の生きている世界と直結している信仰こそが、よほど本物ではないかという気分にもなってしまう。世俗的、あるいは現世利益的かもしれないが、それはそれとして(理解の深さには欠けるが)、信仰の原点を少しだけかもしれないが、垣間見たように思えるのである。雑踏の騒がしさは印象として残るが、そこには観光客で賑わう寺院とは別種の趣きがあった。

素顔のシンガポール山崎 育子

研修旅行 シンガポール 写真3

 初めての参禅会研修旅行は、観光向けでないシンガポールの素顔に出会う旅だった。日本の寺院は、冠婚葬祭以外で出会うのは僧侶と観光客だが、シンガポールでは敬虔に頭を垂れる信者や熱狂的に祈る信者に出会い、日常に宗教が息づいている感じがした。

 光明山普覚禅寺の壮大さと華麗さ、行事で集う信者のための膨大な量の皿と匙。蓮の美しさに見蕩れ迷子になった七堂伽藍の蓮山雙林寺。大須観音を凝縮したような観音堂。仏牙寺では、仏舎利の傍らで瞑想する人。マハ・ササナ・ラムシ寺院の如来像の光背には電飾。盛装した家族が三々五々向かうモスク。恐ろしい形相容姿のカーリー女神を祀るヒンドゥー教寺院、特にヴィーラマカリアマン寺院の半裸の僧侶達の炎と音楽の熱狂的な儀式には息をのんだ。

 一つ一つの寺院が個性的な佇まいと祈りと掟を持っていた。(ヴィーラマカリアマン寺院で、掟破りの場所に靴を脱ぎ、怒りのヒンドゥー僧に、足で靴を放られたことも忘れられない。)寺院といえば、長い歴史を背負った古色蒼然たる落ち着いた世界というイメージを持っていたが、この国の寺院は総じて新しく明るい。南国の青空の下、甍に金色の龍が踊り鳳凰が舞う。金色の仏像も白色の仏像も艶めいている。祭壇も仏具も魚版に至るまで、煌びやかで、極彩色である。ヒンドゥー教寺院は色の大洪水。活力が漲り心が明るくなる。

 奈良の社寺仏像も創建時の色彩をCGで再現したものを見ると華やかである。成長期の宗教・今を生きる宗教となると、南国ならずとも、エネルギッシュ且つパッション溢れる寺院や仏像が崇められるのかなどと考えた。

 今、私の手元には普覚禅寺の庭で拾った菩提樹の葉がある。日本の菩提樹と異なり、葉の先が緒のように細く伸びている。ブッダガヤーの菩提樹を株分けしたものと伺い、本に挟んで持ち帰ったものだ。この葉は栞として、貴重な体験を思い出すよすがとなっている。最後に、初参加の私を温かく受け入れ、色々教えて下さった同行の皆様に心から感謝をささげます。本当にありがとうございました。

複合民族国家シンガポールを訪ねて伊藤 豊

研修旅行 シンガポール 写真4

 私自身が、旅行会社の社員として海外旅行を企画・営業・同行する際に、常に考えていることがあります。それは、ご参加の方々に、訪問する国で様々なものに実際に観て、触れて、聴いて、食べて、感じていただく機会をできる限り提供することです。そして、その国のことを正しく、さらに今まで以上に理解してもらいたいという思いです。

 そういった意味でも、平成24年度の研修旅行で、多民族・多宗教・多文化である複合民族国家・シンガポールを訪れることは、ご参加いただく方々に必ずご満足いただけるとの思いで、3年前の台湾研修旅行に続き、研修旅行の企画から同行までを担当させていただきました。

 特に2日目は、かなりのハードスケジュールにも関わらず、天候にも恵まれ、皆様のご協力をもって無事にこなすことができました。午前は、シンガポール最大の仏教寺院「光明山普覚禅寺」、古刹「蓮山雙林寺」をじっくりと拝登しました。午後には、国の重要文化財にも指定されている「ティアン・ホッケン寺院(天福宮)」、シンガポール最古で最大のイスラム寺院「サルタン・モスク」、リトル・インディアを象徴する「スリ・ヴィーラマカリアマン寺院」など、さまざまな寺院を見学しました。

 特に、チャイナ・タウンにイスラム寺院あり、アラブ・ストリートに仏教寺院ありと、他の国ではなかなか目にすることがない、複合民族国家・シンガポールを象徴する風景が印象的でした。

 シンガポールの祝祭日が、それぞれの宗教を尊重して制定されていることや、公用語が4言語(英語・マレー語・北京語・タミル語)あることなど、人口の大多数を占める華人が中国文化を他の民族に押し付けず、それぞれの民族がそれぞれの文化を尊重しあって生活していることを実感しました。

 また、夕食の「ソング・オブ・インディア」レストランで過ごした時間は、創作インド料理の素晴らしいメニューはもちろんのこと、イギリス植民地時代独特の建築である「ブラック・アンド・ホワイト様式」の邸宅で、タイムスリップしたような、とても思い出深いものになりました。

 3日目のオプショナルツアーにおけるジョホールバル見学では、ジョホール海峡に架かる3本の水道管によってマレーシアから水が輸入されており、その契約期限が2061年であることや、シンガポールの車がマレーシアへ入境する際に適用される「スリークォータータンク法」(ガソリン価格が安いマレーシアでの給油を防ぐため、ガソリンが4分の3以上ない場合に罰金)の存在などを知り、隣国マレーシアとの微妙な外交関係も実感しました。

 シンガポールのここ数年の成長は著しく、2008年にはシンガポール・フライヤー(世界最大の観覧車)の建設やF1レースの誘致、2010年にはカジノリゾート施設やユニバーサルスタジオの開業などがありました。香港と並ぶアジア・太平洋地域の中心都市として、今後ますます発展を続けていくであろう姿を、必ず数年後に見に行きたいと思います。ありがとうございました。

有意義な研修旅行を有難うございました。

旅行のおもいでAlbum

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研修報告Training Report

研修旅行 シンガポール

平成24年度研修旅行
シンガポール

研修旅行 シンガポール

 シンガポールの人口は約500万人。その中の77%が中国系、14%がマレー系、8%がインド系であり、それぞれに仏教、イスラーム、ヒンドゥー教の信者が多数を占めている。また、民族横断的にキリスト教徒も存在し、多民族、多宗教の国家である。

 同時に、シンガポールは1980年代から目覚ましい経済発展を遂げ、今日の東南アジア地域で中核的な地位を築いている。こうした国家の成長を支えた一因として、国民の教育水準の向上が挙げられる。その結果、仏教徒の間では仏教の教義に対する合理的な関心が高まった。一方、幼少時から厳しい競争にさらされることで多大なストレスを抱え、精神的な安らぎを信仰心に求める人も多いという。

 このような背景のもと、同国の仏教は現在大きな変貌を遂げつつある。仏教寺院では、教義の知的な理解を目指す講習会と、精神的な安らぎを求める瞑想会が定期的に開催されている。また、その教えの実践として、様々な慈善活動も積極的に展開されている。

 一方で、古くからの伝統的な信仰も健在である。仏教と儒教と道教が混然となった中国寺院で、現世利益を祈る人々の姿も後を絶たない。

 私達は、こうした同国の仏教事情を見学するため、いくつかの仏教寺院を訪れた。

 光明山普覚禅寺は、シンガポール最大の仏教寺院である。1920年に転道法師によって創建された後、2世宏船法師によって整備された。広大な敷地内には壮麗な伽藍が建ち並び、宏船法師記念堂の最上階のホールには、重さ55トンの釈迦如来像が安置されている。私達は大雄宝殿で拝登諷経を行った後、係の案内によって諸堂を拝観した。

 蓮山雙林寺は、1902年に開創された同国最古の大乗寺院である。開山は賢慧法師。禅宗様式の典型的な七堂伽藍が特徴であり、開山堂には臨済、曹洞両系統の13人の歴代住職の位牌が祀られている。私達は、千手千眼観音を祀る観音堂で拝登諷経を行った。

 佛牙寺龍華院は、仏陀の歯を祀るため、2007年に創建された大乗寺院である。総工費約40億円の半分を政府が出資したといい、このような点にも、多民族と多宗教のバランスの上に国家の安定をはかる同国の特徴が窺われる。

 マハ・ササナ・ラムシ寺院はビルマ仏教を奉じており、今回訪れた唯一の上座仏教寺院である。1878年の開創で、1991年に現在地に移転した。本尊の釈迦如来像の光背に電飾が輝いており、異国情緒豊かである。

 一方、アラブ通りにある観音堂は、1884年に創建された伝統的な中国寺院である。大勢の参拝者が熱心に祈りを捧げ、占いを行う様子は真剣そのものであった。

 このほか、私達は仏教以外の宗教施設も見学した。

 中国人街の天福宮は、1821年に創建された同国最古の道教寺院である。本尊には海の守護神である媽祖(まそ)が祀られており、かつてのシンガポールの歴史を物語っている。

 アラブ通りのサルタン・モスクは1824年の創建。同国最古のイスラーム・モスクである。残念ながら、私達は日没の礼拝直前に訪れたため、堂内を見学できなかった。

 インド人街のスリ・ヴィーラマカリアマン寺院は、カーリー女神を祀るヒンドゥー教寺院である。夕方の法要を見学した私達は、バラモン僧が執り行うけたたましい音楽と火の儀式の迫力と、人々の祈りの熱意に圧倒された。

 短い期間ではあったが、様々な宗教の特徴を垣間見るとともに、自らの信仰を守りつつ、異宗教との共存をはかる人々の姿を見学し、実り多い研修であった。(文)

愛知学院大学 フッター

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