愛知学院大学 禅研究所 禅について

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禅の一言  平成14年度

春風高下無く、花枝自から長短(著・所長 中祖一誠)

 ようやく春風駘蕩の佳い季節を肌に感ずるころになりました。野山は生き生きとした装いを鮮やかに繰り拡げています。薫風は万物をまんべんなくやさしく撫でています。山の古木の枝葉は、さきを競って、あるいは長く、あるいは短く、思い思いに伸びております。山肌に映える草花は、紅く、黄色く、そして緑色にさまざまな色合いで無上の美的世界を精一杯に彩り、余すところがありません。

ところが、わたしたち人間には、六感といわれるやっかいな感覚器官が具わっております。眼耳鼻舌身意という六つの器官がそれです。これらはさまざまな状況のなかで、より好みをして外界を捉えるのを習性としております。この花は美しくてあの花は美しくないとか、この香りは好ましくてあの香りはそうではないとかいって、より好みをしてしまいます。

しかしながら、どの器官も例外なしに、好ましい色や香りとともに、好ましくない嫌な香りや汚い色を受け入れないわけにはいきません。このより好みは、ある意味では人間の世界だけに通用するわがままであるということができます。

その意味で、いま、自然の世界はいたって正直です。万物は生まれながらにして調和していて、不具合というものが全くありません。いま、自然との共生ということが流行していますが、人の側の勝手な都合で”共生”がいわれるとしたら、これは人間のわがままということになります。「春風高下無く、花枝自から長短」という一句のなかに、調和の世界を読みとることが大事です。

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