愛知学院大学 禅研究所 禅について

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禅の一言  平成23年度

「絆」ということ(著・所長 岡島秀隆)

 昨年は3月に東日本大震災が発生しました。未曽有の自然災害を経験した私たちの心情には多くの変化が生じました。そのひとつに、他者を思いやる気持ち、助け合いの機運の高まりがありました。沢山の救援物資が集まり、多くのボランティアが被災地を訪れました。年末に清水寺で行われた「今年の漢字」イベントでは、「絆」の一字が選ばれました。私たち日本人のみならず、世界の人々が人と人の温かい繋がりを確認しようとした歳でした。また、震災は私たちの価値観にも影響を与えたようです。震災を機に、人生の意味や生き方に思いを巡らせたのは私だけではなかったと思います。11月にはブータン国王夫妻が訪日して、清々しい風を運んで来ました。国民総生産(GNP)ならぬ国民総幸福量(GNH)という尺度が注目を浴びたのもその頃でした。絆というのは仏教的に言うと縁起という概念に関連します。絆は本来自由を束縛する意味合いもあり、また情緒的な面が強い言葉ですが、縁起は全ての物事の相互依存関係を示す大きな概念です。縁と書いて「えん」とか「えにし」といったほうが意味ありげな感じです。縁には即座に理解できるものとそうでないものがあります。理解不能な縁はともかく、理解可能なものについては、なるべく良縁を結びたいものです。震災後はそういう思いがつとに強くなりました。本当は縁に良し悪しはなく、それらは純粋な関係性なのでしょうが、人間は時として結びつきの強さに安心感を見出したり、よい結びつきに希望を託したりするようになるのでしょう。禅研究所活動も、善き絆・良き縁の結び目、人と人の和合の場としての役割を少しでも担えるように努力してゆこうと思います。

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