愛知学院大学 禅研究所 禅について

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禅の一言  平成29年度

ストレス社会と坐禅(著・所長 岡島秀隆)

近年、「マインドフルネス瞑想法」という言葉をよく耳にする。
かつての禅ブーム以上に広範な裾野を持った現代的ムーブメントになりつつある。
その発案者の一人であるJ.カバットジンは著書の『マインドフルネスストレス低減法』の序文で、現代社会でストレスに満ちた生活をしているごく普通の人々のために本を書いたと述べている。
また、酒やドラッグに救いを求める非健康的な方法ではなく健康的なストレス対策としてこの瞑想法が考案され、著者自身は鈴木大拙や鈴木俊隆(しゅんりゅう)さらに道元禅師の教説からも影響を受けたと記している。

その具体的方法は宗門の伝統的坐禅法と相似しているが、私はその効果論的傾向に懐疑を抱いていた。
宗門の坐禅が精神の鎮静安定など身心へよい効果をもたらすことがあるのは認める。
しかし、それらは副産物であって、坐禅の希求するのは表層的効果よりも一層深いところにある人間の本性の探究であると主張したいのであった。

しかし、今日の科学的な人間病理の研究、および治療法の究明が人間存在の根底に関連するのは明白である。
それならば、瞑想法を科学的効果論の立場から捉え直すことがあってもよい。
それは禅の己事究明の立場と矛盾しないし、さらに苦悩する人々の救済という仏教の大目標とも一致しているのである。
坐禅法はこれまで伝統を重んじるあまり、それが身心にもたらすよい効果とその科学的解明に無頓着すぎたのではないだろうか。

愛知学院大学の建学精神の根底には坐禅を基礎においた禅仏教の精神がある。
現代ストレス社会の要請を見極め受け止めて、禅仏教の良さを社会へ還元する努力を再確認する必要がある。

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