愛知学院大学 禅研究所 禅について

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禅の一言  令和4年度

個性と自発性を育てる(著・所長 岡島秀隆)

近年、新学習指導要領のもとで、次世代を担う人材の育成を目指した様々な取り組みが始まっている。小中学校のコミュニティ・スクール構想もそのひとつである。地域と学校と子どもたちが構想の3要素だが、それぞれの立場に事情がある。高齢社会の到来に伴う就労年齢の上昇傾向が進む中で、地域社会にはボランティア確保の難しさがある。学校側には、働き方改革の必要が叫ばれる現状で、こうした取組みにどう対処するかが問われることになる。

だが、この取組みの中核になるのは明らかに子どもたちである。そして、そこでは子どもたちの「主体性・自発性」と教育における「協働」がキーワードとなる。この国の将来を担う人材は、自立して創造的に考え行動することができる者である。そうした人材を育てるための具体的な教育モデルが求められている。

少し前に、「指示待ち人間」という言葉が流行った。残念ながら昨今大学に通う学生たちにも、そうした傾向を無自覚無反省に持ち込んでいる場合がある。これは教える側も覚悟を決めて、その誤りを正さねばならない。

達磨(だるま)はかつて4人の弟子たちに、汝は私の「皮を得た」「肉を得た」「骨を得た」「髄(ずい)を得た」と言った。また、「雪峰鼈鼻蛇(せっぽうべつびじゃ)」の公案では、師の言葉に対する長慶(ちょうけい)、玄沙(げんしゃ)、雲門(うんもん)の応答は皆異なっていた。これらの話は、そこで個性ある逸材が育っていたことを示唆(しさ)している。今こそこういう個性的な人材育成ができないのか。それにはまず、個々の異質性を認めることから始めねばならない。「己を以て人を方(たくら)ぶ」とは自分の考えで人を測ることを戒める語だが、そうでなければ個々人の主体的自発的な生き方を尊重する世界はできないと思う。

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