愛知学院大学 禅研究所 禅について

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禅書のしおり 平成10年度

柳田聖山著【ダルマ】(講談社学術文庫)

 われわれは「ダルマ」というと、縁起物の”張り子のダルマ”や”雪ダルマ”、あるいは”ダルマさんが転んだ”という遊びを思い浮かべることが多いでしょう。このダルマには実はモデルとなる人物があったのです。それはおよそ1500年前、インドよりはるばる中国に渡り、禅を弘め、中国禅宗の初祖となつか菩提達摩(磨)であります。ダルマの流れを引く禅は、中国において大いに発展し、わが国でも臨済宗や曹洞宗などの宗派に受け継がれ、現在に至っております。しかしながら、禅宗初祖ダルマの史実は、実のところほとんどわかつておらず、現在、語られるダルマは、禅宗の発展とともに創作された理想の姿としてのダルマなのです。

本書は、禅学およびダルマ研究の第一人者である著者が、様々なダルマ伝説やダルマの語録『二入四行論長巻子』を取り上げ、インド出身の一介の無名僧であったダルマを祖とする中国仏教の一派を、禅宗と呼ぶようになる経過と、これを支えるテキスト(『二入四行論』)の訳注を骨子に、ダルマの歴史と思想の解明を試みたものです。そこには、ダルマが中国に禅の可能性を賭けたように、宇宙時代を迎えようとする人類に、新しい方向性を示すメッセージが込められています。

池田魯参著【現代語訳大乗起信論】(大蔵出版)

 仏の教えを糧にして人生を力強く生きて行くために、仏の教えをどう理解し、どういうふうに実践していったらいいのか。著者の池田魯参氏(駒沢大学教授)は、そういう問題を『大乗起信論』ほど真正面から簡明に解説した仏典はまれだと述べています。

この『大乗起信論』を、従来の古い読み方から離れて、『法華経』を中心にすえて成立した天台教学の立場から読み直し、そうすることで、現代における『大乗起信諭』の意義を新たに掘り起こしてみようというのが、著者の狙いです。そこで、本書ではこの『大乗起信論』をただの逐語訳ではなく、時には思い切った達意訳をも用いながら、現代語で読むことが試みられています。

また、本書は『大乗起信論』の原文と読み下し文、および語句の注釈や内容の解説なども掲載しており、「起信論」の全体像を様々な角度から眺めるためにも、過不足のない構成となっています。

あらゆる人の心が同じように真実の在り方を開示していることを説く仏教。このような「仏教の普遍性」に目を開き、仏教に対する正しい理解を確立するための指針を、本書は私たちに示しています。

青山俊董著【道はるかなりとも】(佼成出版社)

 著者の青山俊董黄老師は、愛知専門尼僧堂の堂長として、真箇の学人養成の任に当たる傍ら、禅の国際的普及を目ざし、国内外における講演活動や参禅指導などにも活躍しています。

老師はわずか五歳で叔母である周山尼のもとに入門し、一五歳の出家得度より半世紀にわたって、尼僧として一筋に仏道を歩んできました。

その間、沢木興道、内山興正、余語翠巌などの諸老師との出会いや様々な勝縁に恵まれ、仏道への方向づけを確立されました。

本書は、老師の出家生活における心の軌跡を綴った自叙伝であり、長き仏道への歩みを回顧し、その時々の出会いや体験を語っています。

出家修行時代は、理想と現実の相違に愕然とし、その苦悶を『法句経』の「他人の邪曲(よこしま)を観(み)るなかれ」の一句との出会いにより、大きな学びを得たと記しています。

また、母、恩師の死や老師自らの入院生活などの体験、更には、堂長という立場の重責、心労、逆境を、全て仏の導きによる学びの場、学びの日々と受けとめています。

純粋な情熱と信念ある生き方は、感動と人生への指標を読者に与えてくれます。

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