愛知学院大学 禅研究所 禅について

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禅書のしおり 平成11年度

角田泰隆著【道元入門】(大蔵出版)

 著者の角田泰隆氏(駒沢短期大学助教授)は、道元禅師研究の新進気鋭の専門家として令名高く、多数の卓越した研究論文を発表され、さらに『正法眼蔵』にも深い学殖をそなえておられます。

本書は、著者のこれまでの研鑚と最新の研究成果にもとづき、道元禅師の宗教者としての全貌とその深遠な思想を、(一)道元の生涯、(二)道元の思想、(三)道元と現代の三方面から、一般の読者にも理解ができるよう流麗平易な言葉で、著者自身の日常の体験をも織り交ぜながら述べられています。

道元禅師の思想の特徴については、「ただ坐る・・・坐禅の仏法」「真理を表現する・・・道得の仏法」「遥かなる道を生きる・・・行持道環の仏法」「道元の修証観」などを視野におさめつつ、広い立場と高い見識から、真の仏教とは何かを真摯に問い続けた禅師の求道と生きざまをいきいきと描き出しています。

また、「道元と葬式仏教」などという視点からも道元禅を捉え、禅師の思想を現代社会にいかに生かすべきかという、重要な問題をも提示されています。

さらに本書全般には、道元禅師の思想の根幹である坐禅の要諦が随所に示され、その的確な説明は、坐禅入門書的性格をも十分果たしうるものといえます。

石川力山編著【禅宗小事典】(法蔵館)

 禅は、インドに淵源をもち、「禅宗」として中国、さらには日本において独自の展開を見せた仏教です。このような過程の中、禅は多種多様な側面を採り入れながら、日本人の生活にまで浸透していきました。

しかし、現代のわが国において禅が正しく理解されているかといえば、必ずしもそうではないように思われます。また、昨今、宗教に関する様々な社会問題が引き起こされている中、既成の教団、特に仏教の各宗派にもその責任が問われており、その解決には、各宗派の教えが正しく理解されることも必要と思われます。そこで、著されたのが本書です。

著書の石川力山氏(元駒沢大学教授)は、独自の視点を待って禅研究の第一線で活躍してきましたが、去る平成9年8月に53歳で急逝されました。本書には氏の研究生活で培われてきた禅宗史観が発揮されています。

内容は「禅宗の成立と日本伝来」「禅宗小事典」「便覧編」の3部により構成され、禅および禅宗の歴史・用語・教義等が比較的平易な言葉でわかりやすく説明されており、禅に興味のある方に、是非お勤めしたい入門書です。

玉城康四郎著【仏道探求】(春秋社)
玉城康四郎著【悟りと解脱】(法蔵館)

 著者の玉城康四郎氏は、昨年1月に83歳で亡くなられましだ。この両書は、同氏が死の直前まで書き継がれた遺作を編集したものです。

玉城氏は、東京大学や日本大学などの教授を歴任した仏教の「研究者」でした。同時に、生涯をかけて仏道を探求した「求道者」でもありました。禅や念仏の実修を通して、幾度かの「目覚め」を体験した王城氏は、その時の状況を「ダンマが顕わになる」と表現し、それこそが釈尊の悟りの境地だと確信します。こうした独自の宗教体験と深い学識とにもとづいて、晩年の同氏は「伝道者」としても精力的に活躍されました。

『仏道探求』は著者自らの仏教者としての軌跡を綴り、生きることの意味を問いかけた一書です。また、『悟りと解脱』では宗教と科学の両面から生命の本質を探究し、両者の一致点を探っています。

王城氏のご冥福をお祈りするとともに、同氏の今生における到達点を鮮やかに示すものとして、ここにこの2冊を紹介します。

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