愛知学院大学 禅研究所 禅について

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禅書のしおり 令和4年度

遠藤廣昭著『中世曹洞宗の地域展開と輪住制』(吉川弘文館)

遠藤廣昭著『中世曹洞宗の地域展開と輪住制』(吉川弘文館)

 著者は駒澤大学大学院を満期退学後、横浜市歴史博物館学芸員として奉職するかたわら、寸暇を惜しんで日本仏教史・日本禅宗史の研究を続けてこられました。本書は中世曹洞宗の地域展開と輪住(りんじゅう)制度(拠点寺院において短期間で住職を交代していく制度)に焦点を当てた成果となっています。

 本書の内容は第一編と第二編に分けられており、第一編においては、中世後期の関東・甲信越地方における曹洞宗の展開が、守護・国人領主・在地領主・戦国大名との関係を視点として跡づけられます。第二編においては、各地の拠点寺院で採用された輪住制度の実態に関する新事実が、史料の丹念な読解と緻密な実証によって、新事実が続々と明らかにされています。これまで、研究の蓄積が充分とはいえなかった分野に関する意欲的な研究成果としておおいに注目されます。

竹村牧男著『道元の〈哲学〉―脱落即現成の世界―』(春秋社)

竹村牧男著『道元の〈哲学〉―脱落即現成の世界―』(春秋社)

 著者は、三重大学・筑波大学・東洋大学で教鞭をとったインド唯識思想・中国華厳思想の研究者です。本書は表題に示される通り、道元の思想を哲学的に究明するものです。はじめに道元の生涯を概観したうえで、道元の生死観・修証論・言語観・時間論・禅哲学について、哲学的な検討が行われます。

 本書における道元思想の解釈は、国内外における哲学的な議論とは異なる部分もありますが、曹洞宗の立場からの道元禅の研究とは異なる切り口から道元思想に切り込んでいますので、大変興味深い内容となっています。

田上太秀著『ブッダ臨終の説法』①〜④(大法輪閣)

田上太秀著『ブッダ臨終の説法』@〜C(大法輪閣)

 本書は、仏教の開祖である釈尊が最後に行った説法、漢訳『涅槃経』の翻訳書です。全40巻の『涅槃経』を10巻ごとに区切って翻訳しているため、全4巻で完結します。本文中に註記が全く付されていないのが特徴で、初学者が読みやすいように作られています。

 著者は、以前も同様の書籍を刊行しましたが、今回の新装版では、より正確な翻訳・表現が試みられています。

菅野博史著『中国仏教の経典解釈と思想研究』(法藏館)

菅野博史著『中国仏教の経典解釈と思想研究』(法藏館)

 著者は、『法華経』などの註釈書を中心とする中国仏教思想の研究者で、本書は古稀を迎えた著者が、人生の節目に編んだ論文集です。『法華経』とその註釈書を始め、『維摩経』『涅槃経』『般若経』の各註釈書、智・吉蔵・日蓮の思想、さらには富永仲基と平田篤胤の仏教批判も取り上げるなど、扱うテーマは多岐に亘ります。著者の広深なる仏教理解と、緻密な読解、研究に対する高い意欲が遺憾なく発揮されています。

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