グローバル社会で活躍できるかどうかは、いかに大きな想像力があるかにかかっています。これは、自分がどのように生きたいかという、自分の未来をイメージする力です。
そのためには、大学時代に多くの本を読み、広い知識を身につけて下さい。また、うれしいことや悲しいことも含めて、様々な体験を積むことも大切です。人生には、できれば避けたいような出来事もありますが、それも自分の大切な宝物になるのです。
こうして積み上げた知識は、たき火の薪に相当します。薪が多ければ、火も大きくなります。しかし、薪に火を付けなければ何にもなりません。知識という薪に火をつけるのが想像力の役割なのです。
ただし、自分の火と他人の火を比較する必要はありません。自分は自分でいい。私はよく「アイ・ラヴ・ミー」と言うのですが、自分自身を精一杯生きることに、人間の尊厳があると考えています。
ですから、グローバル社会で大切なのは、強烈な個性を持つことです。グローバル社会とは、アメり力中心の画一的な社会のことですから、自分の価値観、自分の物語をもち、それを表現できる人が評価されます。決して自分の殻にこもらないで下さい。日本人はお行儀がよすぎます。
それと、人生を切り開くには、どこかで決断することが必要です。決断はリスクを伴いますが、決断のない人生は先細りになってしまいます。
私は14歳で出家しましたが、その時には誰にも相談しませんでした。34歳で寺を出ようと決心した時も、周囲の人々からは反対されました。しかも、当時の私には何のツテもなく、想像力があっただけなのです。ところが、そこヘハーバード大学から、奨学金付きで私を迎えてくれるという連絡がやってきました。そして、大学を卒業した後も、次々におとぎ話のような誘いが舞い込んできました。これは、私の中に未来をイメージする強い力があったからです。自分が何かをしたいという想いを持ち続けると、いつかは実現するのです。
さらにもう一つ、皆さんには世界を旅していただきたい。それも欧米のような先進国ではなく、途上国を訪ねて下さい。世界には様々な宗教文化、価値観をもつ人々がいます。人々が貧しい中でどのように生きているのかを、自分の目で確かめてほしいのです。そして、できればそこで留まって、彼らと同じ生活をしてみる。そうすると想像力が養われ、自分が何をすればいいのかが、はっきり見えてくるはずです。ですから、若い時にはパック旅行に参加するのではなく、多少冒険的な旅行をして欲しいと思います。
最近、自分の手首を切る高校生が多いそうです。それをしないと、生きている実感がないんですね。でも、それは自分が爆発していないということ。それを他人のせいにしても仕方がありません。皆さんは過去を悔やむのではなく、今を楽しんで生きて下さい。その結果、日本の未来は輝くことになると思います。
■学生の質問:先生を突き動かしてきた原動力は何ですか。
□答:人間の心の中には非常に大きな無意識の部分があり、その真ん中に「狂い」があります。この「狂い」は人間の根源的な生命力です。人々はそれを意識的に抑圧していますが、それを少しずつ噴出させれば、自分の個性が表れます。芸術家の活動はその典型ですね。この「狂い」と上手に付き合うことが大切です。
■学生の質問:今は自分で決断するのが難しい時代ではないですか。
□答:いいえ。今は多様性が認められていますから、誰もが自分のやりたいことをできる時代です。ただ、最近は様々な場面で「型」が失われています。私は寺の中で「型」の世界にいたから、寺を出た時に「型破り」ができました。皆さんも何か一つ「型」を身につけてください。
■学生の質問:過去を悔やみそうな時、どうしたらいいですか。
□答:大胆な生き方をすれば、失敗も大きなものになります。でも、挫折した時は人間性を掘り下げるチャンスです。その結果、困っている人に共感できる人間になれるのです。
■学生の質問:未来に不安がある時は、どうしたらいいですか。
□答:最後の決断をするのは自分自身ですが、本当にあなたを受け入れてくれる友入、魂が共鳴する真の友人を作ることが大切です。
■学生の質問:先生の人生の点数は。
□答:私の唯一の人生ですから、他人と比較はできません。だから、百点満点。