愛知学院大学 禅研究所 禅について

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講演会レポート 平成26年度

絆 ―わたしたちは忘れない―曹洞宗海岸山普門寺住職 熊谷 光洋

3月11日の震災後、20日に、福井県からボランティアの人が、私の住む陸前高田へみえて、約3カ月間、私のお寺で生活を共にしました。ガレキの撤去や介護の等、さまざまな支援を頂く中で、檀家の人達がものすごく喜んでいました。「感謝する」という言葉を皆が何遍も言っていました。こんなうれしいことはなかった。そのくらい私達は人の力を待っておりました。

その後、一段落した7月の中頃から毎日、亡くなった方への供養として朝のお勤めを始めました。それが今では行方不明者の遺族の方に対して行っています。その理由は、未だ発見されない身内がおられる遺族の思いというのは本当に大変です。実際に、一年間ご葬儀をあげなかった檀信徒の方がいました。一周忌の直前まで「したくない。お父さんは亡くなってない」と、かたくなに拒否していました。けれども、一年たった頃に、ご葬儀をすることになりました。葬儀終了後の奥さんの顔が今でも印象に残っています。ほっとした顔をされ、どこか柔らかい表情に変わっていました。こうした経緯から、僧侶の大事な仕事というのは、亡くなった方を安心できる場所へ確実にお送りするという行いが、多くの遺族の方に望まれていることに気付かされたからです。

さて、三年がたった今、被災地はもう復興の方向に向かっていると思われるかもしれません。けれども、私達は、あの3月11日から、大きく変わった人と言うのはあまりいません。むしろ今の方が、悲しみが増え、涙の出る機会が多くなりました。しかし、いつまでも悲しい苦しいという思いだけでは自分達の力で前へ歩むことはできません。

今回の震災を通して、多くのボランティアの方々がみえました。彼らの対応は、「悪いことはしないで善いことをする、人のためにつくす」といった姿でした。仏教の「止悪修善、利他」の実践そのものでした。それによって、私達は安心をもらい、彼らのまねをしたい、後を付いて行きたいという気持ちが湧き上がってきました。そして、後進に、この考えが受け継がれていくことが何よりも大事であり、復興への大きな力になっていくと考えております。

東北福祉大学非常勤講師 川村 昭光

私は、石巻市でボランティア活動にあたりました。まず、最初に行ったのが、みそ汁の炊き出し活動です。その理由は、阪神・淡路大震災の支援の経験があったからです。辛うじて命を永らえた方が、低体温で亡くなっていくのを目の当たりにする中で、暖を取るためのものと、食料を迅速に配布しなければならない必要性を実感したからです。

そして活動を始めると、他県からボランティアの方が続々とおいでになりました。今回は、東海地方に関係のある方を二例紹介したいと思います。まず、三重の曹洞宗青年会が3月20日過ぎに、東松島市と石巻を中心に救援活動を開始しました。彼らには、ボランティア活動以外に、私達の要望から伊勢志摩産の鯛を送ってもらいました。今でも月一で頂いております。そして、名古屋からは、矢野きよ美さんが放送関係者やタレントさんらと共に、一ボランティアとして炊き出しをしてもらいました。

今なお続いている活動で、被災地に必要なのは、娯楽であり、心の底から笑ってもらえるがとても大切なのです。私達は、落語家を呼んだり、コンサートを開きました。また、人気店のラーメン屋さんには、友情販売をしてもらいました。そして、売上金の全てを、仮設の管理人団体に寄付をしてもらいました。こうした活動もしました。

現在、石巻は、港町に住んでいた人達が、約20パーセントしか帰らない地区が多くあります。多くの方々は、内陸のほうに移住してしまいました。そうすると地域のコミュニティも崩壊して、お寺の檀家も全てロストします。ですから、我々は自衛のために、ロストした檀家をいつまでも追わないで、自分達で自活しながら、ロストした分を他の形でやっていこうと考えています。そこで、沿岸地区にパワーリハビリの福祉施設を建てて、そこでの給与で寺院を賄っていく新たな事業の計画を進めています。

また、私達は、NPOという形でボランティアの受け入れ体制を整えております。ただ見つめて手を握ってあげるだけでも、私達は勇気づけられるのです。愛知学院大学から夏休み中、短期でも結構ですから、参画してみたいという方、ぜひお引き受けしたいと考えております。

※本学でも、今回の震災で、岩手県大おお槌つち町出身の学生がお亡くなりになりました。また、ボランティアに関しては、震災後から毎年夏休み期間中、職員とボランティアセンターの学生が岩手県を中心に活動しております。

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